拾い出しAIを疑うとき、多くの人は「取りこぼし」を心配します。実際に危ないのは逆で、図面に無いものが数字になって出てきます。しかも、それらしい桁で出ます。
先に結論だけ。図面から数量を拾うAIは、寸法が書いてある図面に対しては人の物差しと同じ精度で測れます。実際の図面で、印字されている寸法48か所と、AIが図面の座標から測った値を突き合わせたところ、誤差の中央値は0.15%でした。10メートルに対して1.5センチです。
問題はそこではありません。AIが「測れないもの」を測ったつもりになったとき、出てくる数字が空欄ではなく、もっともらしい数量だという点です。以下は、実際の図面で数えて見つかった4つの狂い方です。
図面には、範囲を示す網掛けや斜線が引いてあります。人はこれを「この範囲」と読みますが、線として見れば、細い線が何十本も平行に並んでいるだけです。
ダクトの延長を拾わせたとき、この網掛けの線を1本ずつ長さに数えて、183.8メートルぶんの存在しない配管が積み上がりました。合計の桁が不自然ではないので、表を見ただけでは気づきません。
止め方は、線の集まり方を見ることです。等間隔で同じ向きに並ぶ短い線は、単体の部材ではなく面の表現として扱う。拾い出しの対象から外して、面として別に数えます。
セットの図面には、全ページの同じ位置に同じ表が刷ってあります。凡例、記号一覧、材料のサイズ表。人は1回読めば済ませますが、AIは1枚ずつ別の情報として読みます。
23枚のセットで、全ページ共通のサイズ表を毎ページ拾った結果、608件の架空の計上が出ました。数量そのものは正しく読めているので、1行ずつ見ても間違いが見えません。
止め方は、座標で見分けることです。複数ページの同じ座標に同じ内容があるものは図枠の一部であり、その図面固有の情報ではない。最初の1枚だけ採って、残りは落とします。
平面図の中で、壁と、寸法の補助線と、家具の輪郭は、どれも同じ「線」です。違いは太さにあります。
ある平面図では、壁として描かれていたのは線幅0.5ptの線だけでした。太さを見ずに、向かい合う線をすべて壁のペアとして拾わせると、1,166メートルぶんの存在しない壁が出ます。実際の壁の何倍かの長さです。
止め方は、線幅で先に絞ることです。図面ごとに壁の線幅は違うので、1本に決め打ちせず、その図面の中で何ptの線が閉じた部屋を作っているかを見てから拾います。
これがいちばん見つけにくい狂い方です。
現場で使った図面には、人が鉛筆で書いた数字が載っていることがあります。AIに読ませると、その数字を高い確からしさで拾います。AIにとっては、図面に書いてある数字だからです。
結果として、AIの出した集計が、人がすでに出した集計と一致します。検算したつもりになれますが、実際には同じ数字を2回見ているだけです。人の集計が間違っていた場合、AIはその間違いを最高確度で追認します。
止め方は、手書きが乗った図面を、清書された図面と分けて扱うことです。手書きの数字は「参考」の欄に置いて、数量の欄には入れない。突き合わせるのは、人の集計とAIの集計ではなく、人の集計と図面の座標から測った値です。
どれも、AIが読み間違えたのではありません。図面に書いてあるものを、書いてあるとおりに読んだ結果です。狂いは、読む側ではなく「何を数量と見なすか」の取り決めのほうにあります。
だから、精度を上げる作業は、AIを賢くすることではなく、図面の描き方の作法をAIに教えることになります。網掛けは面、図枠は共通、壁はこの線幅、手書きは参考。この4つを入れるだけで、架空の計上は消えます。
そして、どれだけ作法を教えても、寸法が書かれていない図面から寸法は出てきません。写真で撮った図面や、寸法の無い間取り図では、読める分だけが数量になり、残りは「現地で測る」として分けて残すのが正しい扱いです。空欄を埋めるために目分量で出した数字は、上の4つと同じ種類の嘘になります。
導入を検討するとき、精度の話を聞くより早い確かめ方があります。手元の図面を1枚渡して、次の3つを見てください。
1つ目。出てきた数量の行に、図面のどこを測った値かが書いてあるか。書いていなければ、その数字は検算できません。
2つ目。「現地で測る」に相当する行があるか。全部の行に数字が入っている拾い出し表は、測れないところを目分量で埋めています。
3つ目。図面に印字されている寸法と、拾い出し表の値が合うか。これは三角スケールを当てれば5分で確かめられます。合わない場合、合わない理由が上の4つのどれかであることが多いです。
寸法が印字されている図面については、人が物差しで測るのと同じ精度が出ます。実測で誤差の中央値0.15%でした。ただし、寸法が書かれていない部分は、人もAIも測れません。AIの利点は精度より速さと、測れない箇所を測れないと申告できることです。
使えますが、数量にできるのは寸法が読める分だけです。残りは「現地で測る」行として分けて残す扱いになります。寸法の無い間取り図や手書きのスケッチでは、この行が増えます。
下書きとして使い、確定は人がします。特に、どこを測った値かが書かれていない行と、確からしさの低い行は、金額に入れる前に人が見ます。
読めますが、書き込んだ数字をAIが答えとして拾います。人の集計と一致しても検算になりません。手書きは参考として分け、数量は図面の座標から測った値で突き合わせてください。
株式会社and°は、図面から数量を拾うAIを内装リフォームの元請けの現場で開発し、使いながら直しています。手元の図面でどこまで出るかは、1枚あれば確かめられます。